2007/07/30 J-POP短評

J-POP短評

宇多田ひかる

  • 楽しいパーティもいつかは終わる時間が来る、恋の終わりのタイミング、明るく前向きだけどその頑張った感じが暗く、さびしさ、閉じこもった感じ、ビートに完全に乗り切らない浮遊感、なんだかチグハグ、不安定、それらが魅力であり、センチメンタルである。
  • 歌詞には母親への恨みのようなものが感じられ、言葉遊びが多いところなど、椎名林檎など同年代の歌い手と共通するが、宇多田の言葉遊びは孤独だったということだろう。昆虫好き、アニメ好き、未来好きなどの嗜好は孤独な人に多いと思う。歌詞はとてもよい。
  • ロックやR&Bとして聞くよりも、すごい歌謡曲として聞くべきだ。レコード会社はアイドルとして売り出したそうだが、帰国子女で英語歌詞が上手く、日本語部分も英語っぽく歌うので、マスコミが本格的R&Bだと報道した。当時からポップであり、アメリカ人に少なくともブルースを感じさせるところはなく、レコード会社としてもR&Bと言われて驚いたという。敢えてジャンルを言えばテクノだと思う。テクノは平板な音楽でなく現在ではダンスミュージックである。
  • 3rdシングルの「First Love」(1999)がよい。その他、近未来感、ファンタジー感のある曲が多い。
  • 現在も進歩し続けているアーチストであるので、最新作が一番面白い。今なら4枚目のアルバム「URTRA BLUE」がよい。

SAYAKA

  • 芸術家的な才覚があり、アルバム「Doll」(2005年)は青春の恋愛を過ぎ去った視点から歌う。接続詞「そして」の使い方が印象的。
  • 松田聖子の娘。

椎名林檎

  • 「無罪モラトリアム」(1999)、「勝訴ストリップ」(2000)がよい。強烈な時代性と年代性を持ち、特に若い女性をひきつけた。当時のポータブル型オーディオはCDやMDだったが、意識を集中しヘッドフォンで聴かれ、この音楽の持つ大きな力が人を支えた。
  • 歌詞の傾向として、母親への恨みがある。文学で言えば内田春菊の私小説的世界のような、破壊的、自虐的な感覚があって棘もあり、ある種文学的衝動が感じられる音楽であった。女としての性(さが)の自覚、血は争えないことへの自暴感がある。
  • パンクロック趣味があるためどうしても短命になるが、楽曲と歌がよいので10年に一度くらいは時代が違ってもリバイバルすると思う。
  • 2001年以降、バンド「東京事変」として上手いメンバーを揃えたが、ストレートさに欠けるため最初の2枚にはおよばない。

松田聖子

  • 1980年夏より「SQUALL」「North Wind」、1981年「Silhouette」「風立ちぬ」、1982年「Pineapple」「Candy」と続く強力なデビュー。他の追随を許さない歌謡曲を生み出した。
  • 1988年あたりまでのアイドル時代以降は評価が分かれるが、1996年のアメリカ時代の「Was It The Future」などは今聞いてもよい作品である。
  • SAYAKAの母。

松任谷由美(荒井由美、ユーミン)

  • ファーストアルバムから「NO SIDE」までがよい。
    • 特に荒井由美時代の「ひこうき雲」「MISSLIM」「COBALT HOUR」「14番目の月」が素晴らしい出来ばえ。
    • その後は「時のないホテル」「昨晩お会いしましょう」も傑作。
  • 都会的なセンスのよい音楽と言われる。学生時代にグループで楽しく遊んだ経験のある人の体験には感傷的すぎるくらいによい音楽であるが、たとえば孤独だった人にとっては歌詞も歌い方も気に添わないと思う。
  • 「ボイジャー」あたりから変質が始まり、松任谷由美自身が努力を怠ったとは思えないが、青春に訴える力が弱まったように感じる。

矢井田瞳

  • ストレートなロックの演奏でありとてもよい。
  • アルバムはどれもよいが(ロックを迷わず演奏する限りどれでもよいはずだが)、3rdの「i/flancy」がよい。1stの「daiya-monde」、2ndの「Candlize」ももちろんよい。
  • デビュー当時、椎名林檎のマネと思った人が多かった。今では何でそうなるのか理解に苦しむところだが、2000年当時日本ではストレートなロックがなく、女性ボーカルのロックが同じものに聞こえたのだと思われる。ストレートなロックは昔からあると考えるファンもいると思うが、果たしてそうだろうか。ロックは自称ではない。1ジャンルのロックとして成立しているものもあるが、優れて発展した日本のポピュラー、歌謡曲の影響や派生でない音楽は椎名林檎と矢井田瞳の登場以前には無かったと見ることができる。つまり、歌謡曲が衰退したので新しく開始することができた。
--y(2005-11-23)

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