ブラジル音楽草 (MPB)
ブラジル音楽草 (MPB)
ブラジル音楽、MPB、ミルトン・ナシメントとその周辺について。(Brazil-Ongaku-So)
アーチスト名、曲名等はカタカナ或いは近似の英字で表記しております。
update: 2004,1,3(sat)アーチスト名、曲名等はカタカナ或いは近似の英字で表記しております。
記事 | ミルトン・ナシメント作品 | 参考文献等 | MPB以外の音楽評論 | 序 |
- 記事
- ミルトン・ナシメント『タンボールス・ヂ・ミナス』(DVD)
- ミルトン・ナシメント『2003年9月22日ブルーノート東京出演』
- ミルトン・ナシメント『ピエタ』Milton Nascimento "Pieta"
- ベト・ゲヂス『50 アノス・ヂ・アオ・ヴィーヴォ』- Beto Buedes "50 Anos Ao Vivo" (DVD)
- ミルトン・ナシメント『アクースチコ・ナ・スイッサ』(DVD)
- ミルトン・ナシメント『ミルトン・エ・ジル』
- ミルトン・ナシメント 2000年発売CD
- ガブリエル・オ・ペンサドールとプリンスは似ている?
- ミルトン・ナシメント『アミーゴ・エ・コイザ・プラ・セ・グァルダール』(CD Box)
Milton Nascimento, "AMIGO E COISA PRA SE GUARDAR...", PolyGram(Brazil), 1997 - この夏はウェス・モンゴメリー
- ミルトン・ナシメント「クルーナー」
- ミルトン・ナシメント「ア・セヂ・ヂ・ペイシ」(ビデオ作品)
- 『ゲッツ/ジルベルト』は名作か?(増補) 記事補足
- プラッサ・ド・ブラジル vol.15 (1998/7/27)レポート
- 音楽雑誌のブラジル特集
- ブラジルのリズム(マルコス・スザーノ・レッスンビデオより)
- 夏はやっぱりボサノヴァ?
- ネルソン・ゴンサルヴィス(Nelson Goncalves)死去
- 『ユリイカ 1998年6月号』特集ボサノヴァ
- フランク・シナトラ死去
- プレミオ・シャープ(The 11th Sharp Awards in Brazilian Music)
- シコ・ブアルキ、ピアソラの未完成曲の権利得る
- Praca do Brasil vol.12 (1998/4/27,プラッサ・オンゼ)レポート
- Praca do Brasil vol.11 (1998/3/30,プラッサ・オンゼ)レポート
- 作品目録
- 作品目録 (jazz)
- ブラジル研究
- マスメディア
- 18のリズム・バリエーション(マルコス・スザーノ・レッスンビデオ)
- 付記(参考文献、推奨盤) 付記
( ( ( ( 記事 ) ) ) )
ミルトン・ナシメント『タンボールス・ヂ・ミナス』(DVD)
スタジオライブの映像作品。ミルトン・ナシメントがボーカルとギター、ヴァグネル・チゾがピアノ。(2002/8/31)
ミルトン・ナシメント『2003年9月22日ブルーノート東京出演』
2003年9月22日、23日、25日~27日、ブルーノート東京に出演した。事前情報では最新作「ピエタ」中心ということだったが、60年代~70年代の曲も多く演奏された。ゲスト・ヴォーカルはマリーナ・マシャード。ベースのガスタゥン・ヴィレロイが日本語でミルトン・ナシメントをメンバー紹介する一幕もあった。ミルトン・ナシメントは現在、実母そして養母の影を追って生き続けているのではないだろうか。(2003/12/20)
9月22日1stステージ曲目(メドレーも分けて記述)
Renata (ラテンポップナンバー?)・・・バンドメンバーによるインストルメンタル。
Vera Cruz (1968 Courage)・・・同じくインストルメンタル。
Bagaceira (2002 Cabruera - Cabruera)・・・マリーナ・マシャード登場。
Casa Aberta (2002 Pieta)・・・ミルトン・ナシメント登場。
Tudo Que Voce Podia Ser (1972 Clube Da Esquina)
Caxanga (? 1977 Elis - Elis Regina / 1983 Ao Vivo - live)
Going To California (1971 Led Zeppelin IVか)・・・マリーナ・マシャードが歌ってたように覚えている。
Pablo (1973 Milagre Dos Peixes)
Morro Velho (1967 Travessia)
Cancao Do Sal (1967 Travessia)
Tristsse (2002 Pieta)
Lilia (1972 Clube Da Esquina)
Nao Me Diga Adeus (1965 O Canto Livre de Nara - Nara Leao)
As Vezes Deus Exagera (2002 Pieta)
Idolatrada (1975 Minas)
Ponta De Areia (1975 Minas)
Cravo E Canela (1972 Clube Da Esquina)
Travessia (1967 Travessia)・・・ミルトン・ナシメントのアコーデオン独奏
Maria Maria (1967 Travessia)・・・アンコール曲
メンバー:
テロ・ボルジス(Telo Borges)キーボード
キコ・コンチネンチーノ(Kiko Continentino)キーボード
ヴィドル・サンチアゴ(Widor Santiago)サックス&フルート
リンコルン・シェイブ(Lincoln Cheib)ドラムス
マルコ・ロボ(Marco Lobo)パーカッション
ウィルソン・ロペス(Wilson Lopes)ギター&ヴィオラゥン
ガスタゥン・ヴィレロイ(Gastao Villeroy)ベース
マリーナ・マシャード(Marina Machado)ヴォーカル
9月22日1stステージ曲目(メドレーも分けて記述)
Renata (ラテンポップナンバー?)・・・バンドメンバーによるインストルメンタル。
Vera Cruz (1968 Courage)・・・同じくインストルメンタル。
Bagaceira (2002 Cabruera - Cabruera)・・・マリーナ・マシャード登場。
Casa Aberta (2002 Pieta)・・・ミルトン・ナシメント登場。
Tudo Que Voce Podia Ser (1972 Clube Da Esquina)
Caxanga (? 1977 Elis - Elis Regina / 1983 Ao Vivo - live)
Going To California (1971 Led Zeppelin IVか)・・・マリーナ・マシャードが歌ってたように覚えている。
Pablo (1973 Milagre Dos Peixes)
Morro Velho (1967 Travessia)
Cancao Do Sal (1967 Travessia)
Tristsse (2002 Pieta)
Lilia (1972 Clube Da Esquina)
Nao Me Diga Adeus (1965 O Canto Livre de Nara - Nara Leao)
As Vezes Deus Exagera (2002 Pieta)
Idolatrada (1975 Minas)
Ponta De Areia (1975 Minas)
Cravo E Canela (1972 Clube Da Esquina)
Travessia (1967 Travessia)・・・ミルトン・ナシメントのアコーデオン独奏
Maria Maria (1967 Travessia)・・・アンコール曲
メンバー:
テロ・ボルジス(Telo Borges)キーボード
キコ・コンチネンチーノ(Kiko Continentino)キーボード
ヴィドル・サンチアゴ(Widor Santiago)サックス&フルート
リンコルン・シェイブ(Lincoln Cheib)ドラムス
マルコ・ロボ(Marco Lobo)パーカッション
ウィルソン・ロペス(Wilson Lopes)ギター&ヴィオラゥン
ガスタゥン・ヴィレロイ(Gastao Villeroy)ベース
マリーナ・マシャード(Marina Machado)ヴォーカル
ベト・ゲヂス『50 アノス・ヂ・アオ・ヴィーヴォ』- Beto Buedes "50 Anos Ao Vivo" (DVD)
2002年末に発売された、2001年9月11日ライブのDVD。1曲目の"Amor De Indio"(インディオの愛)にミルトン・ナシメントが登場し歌う。飾り気のない落ち着いた作品。(2003/2/16)
ミルトン・ナシメント『ピエタ』- Milton Nascimento "Pieta"
2002年末に発売されたアルバム。ピエタは聖母彫像の名前で、ジャケットはキリストの傷ついた手を支えるマリアの手である。ミルトン・ナシメントは生後1年頃に一旦実母と別れており、マリアは養母リリアのイメージである。内容はとてもよい。(2003/2/16)
ベト・ゲヂス『50 アノス・ヂ・アオ・ヴィーヴォ』- Beto Buedes "50 Anos Ao Vivo" (DVD)
2002年末に発売された、2001年9月11日ライブのDVD。1曲目の"Amor De Indio"(インディオの愛)にミルトン・ナシメントが登場し歌う。飾り気のない落ち着いた作品。(2003/2/16)
ミルトン・ナシメント『アクースチコ・ナ・スイッサ』(DVD)
スタジオライブの映像作品。ミルトン・ナシメントがボーカルとギター、ヴァグネル・チゾがピアノ。(2002/8/31)
ミルトン・ナシメント『ミルトン・エ・ジル』
これは非常に優れた作品です。健康が気になるミルトンがこんな作品を20世紀最後に残すとは予想していなかったので驚きました。また、ジルベルト・ジルとの共同作品ということで全く申し分ありません。(2001/2/26)
ミルトン・ナシメント 2000年発売CD
発売時期は忘れてしまいまいましたが、下記のCDについてご紹介します。
『ミルトン』は中原仁編「ブラジリアン・ミュージック」にも紹介される名盤で、今迄は絶版のアナログ盤以外にCDでもBOXセット(アミーゴ・エ・コイザ・プラ・セ・グァルダール, PolyGram(Brazil), 1997→紹介記事)に含まれるのみであったが単独で再発されました。若い時代の傑作で歌声もギターも力強い。参加メンバーもトニーニョ・オルタ(g)、ロベルト・シルバ(ds)他、ブラジルの大物に加え、ショーター、ハンコッゥ、アイルト・モレイラら米国のジャズで活躍するメンバーも加わっていて演奏に一分の隙間もない。代表作の一つで、受けきれない程の力強い迫力が発信されている。
尚、1970年のEMI盤の『ミルトン』(Milton , EMI 830433 2(Brazil))とは別作品。
『ノス・バィレ・ダ・ヴィーダ』はベスト盤で1曲目がアルバムタイトルの名曲「ノス・バィレ・ダ・ヴィーダ」、2曲目も「マリア・マリア」と名曲がずらり。既にミルトンのCDを沢山持っている人や他のベスト盤を持つ人は、ジャケットも見開き1枚と薄く貴重な写真の掲載もない本CDを買うほどではないと思うが、選曲はよい。
『クルーナー・インクルインド・シングル・キリング・ミー・ソフトリー』は1999年に発売された『クルーナー』にシングルの『キリング・ミー・ソフトリー』が付いてセットで発売されたもの。『キリング・ミー・ソフトリー』はブラジルのTVドラマで使われた曲だそうです。
『クルーナー』はミルトンが影響を受けたアメリカのポップスを集めて歌った作品で『キリング・ミー・ソフトリー』もその延長と言えますが、とてもよい感じなので番外編として全体を締めくくる感じがします。シングルは5分程ですがファンならば買う価値は十分にあるでしょう。但し、『クルーナー』は私はとても好きですが、ブラジル音楽として先ず一番に聴く作品ではないと思います。ブラジルのポピュラー音楽をいろいろ聴いた後に聴けば歴史が感じられてとてもよいのですが・・・。
ダニエル・バレンボイムの『ブラジリアン・ラプソディ』にミルトン・ナシメントは2曲ボーカルで参加してます。このCD自体はボサノヴァ、MPBやブラジル出身作曲家のクラシック曲を演奏した企画盤で、同様の企画はリチャード・ストルツマン他既にあるアイデアなのですが、アルゼンチン生まれのバレンボイムも是非作ってみたかったのでしょう。
ミルトンの歌はやや元気がなく、全体のプロデュースの問題かも知れませんが、そんなにお奨めではありません。
1999年の記事- ミルトン
MILTON, PolyGram(Verve) 314 543 485-2(USA), 1976/2000, A&M盤 - ノス・バィレ・ダ・ヴィーダ(ベスト盤)
Nos Bailes da Vida, PolyGram 7314546442-2(Brazil), 2000, GLOBO UNIVERSALレーベル - クルーナー・インクルインド・シングル・キリング・ミー・ソフトリー
"crooner" Incluindo single "Killing Me Softlay", WARNER 398425913-2 / CDWP018(Brazil), 1999/2000, WEAレーベル - ダニエル・バレンボイム, ブラジリアン・ラプソディ
Daniel Barenboim, Brazilian Rhapsody, WARNER WPCS-10556(3984-21482-1)(Japan), 2000/7/26, TELDECレーベル
『ミルトン』は中原仁編「ブラジリアン・ミュージック」にも紹介される名盤で、今迄は絶版のアナログ盤以外にCDでもBOXセット(アミーゴ・エ・コイザ・プラ・セ・グァルダール, PolyGram(Brazil), 1997→紹介記事)に含まれるのみであったが単独で再発されました。若い時代の傑作で歌声もギターも力強い。参加メンバーもトニーニョ・オルタ(g)、ロベルト・シルバ(ds)他、ブラジルの大物に加え、ショーター、ハンコッゥ、アイルト・モレイラら米国のジャズで活躍するメンバーも加わっていて演奏に一分の隙間もない。代表作の一つで、受けきれない程の力強い迫力が発信されている。
尚、1970年のEMI盤の『ミルトン』(Milton , EMI 830433 2(Brazil))とは別作品。
『ノス・バィレ・ダ・ヴィーダ』はベスト盤で1曲目がアルバムタイトルの名曲「ノス・バィレ・ダ・ヴィーダ」、2曲目も「マリア・マリア」と名曲がずらり。既にミルトンのCDを沢山持っている人や他のベスト盤を持つ人は、ジャケットも見開き1枚と薄く貴重な写真の掲載もない本CDを買うほどではないと思うが、選曲はよい。
『クルーナー・インクルインド・シングル・キリング・ミー・ソフトリー』は1999年に発売された『クルーナー』にシングルの『キリング・ミー・ソフトリー』が付いてセットで発売されたもの。『キリング・ミー・ソフトリー』はブラジルのTVドラマで使われた曲だそうです。
『クルーナー』はミルトンが影響を受けたアメリカのポップスを集めて歌った作品で『キリング・ミー・ソフトリー』もその延長と言えますが、とてもよい感じなので番外編として全体を締めくくる感じがします。シングルは5分程ですがファンならば買う価値は十分にあるでしょう。但し、『クルーナー』は私はとても好きですが、ブラジル音楽として先ず一番に聴く作品ではないと思います。ブラジルのポピュラー音楽をいろいろ聴いた後に聴けば歴史が感じられてとてもよいのですが・・・。
ダニエル・バレンボイムの『ブラジリアン・ラプソディ』にミルトン・ナシメントは2曲ボーカルで参加してます。このCD自体はボサノヴァ、MPBやブラジル出身作曲家のクラシック曲を演奏した企画盤で、同様の企画はリチャード・ストルツマン他既にあるアイデアなのですが、アルゼンチン生まれのバレンボイムも是非作ってみたかったのでしょう。
ミルトンの歌はやや元気がなく、全体のプロデュースの問題かも知れませんが、そんなにお奨めではありません。
- 『ブラジリアン・ラプソディ』ボーカル参加曲
- 2.TRAVESSIA, トラヴェシア
- 14.Eu Sei Que Vou Te Amar, あなたを愛してしまう(アントニオ・カルロス・ジョビン作曲)
ブラジル音楽草 >記事 >1999年の記事
1999年の記事
update:2001,2,26(sun)
目次
- ガブリエル・オ・ペンサドールとプリンスは似ている?
- ミルトン・ナシメント『アミーゴ・エ・コイザ・プラ・セ・グァルダール』(CD Box)
Milton Nascimento, "AMIGO E COISA PRA SE GUARDAR...", PolyGram(Brazil), 1997
- この夏はウェス・モンゴメリー
- ミルトン・ナシメント「クルーナー」
- ミルトン・ナシメント「ア・セヂ・ヂ・ペイシ」(ビデオ作品)
- 『ゲッツ/ジルベルト』は名作か?(増補) 記事補足
Milton Nascimento, "AMIGO E COISA PRA SE GUARDAR...", PolyGram(Brazil), 1997
記事
ガブリエル・オ・ペンサドールとプリンスは似ている?
都内のレコード店にはガブリエルの「Quebra - Cebeca」(ケブラ・カベッサ)とマルセロ・D2がリーダーをやっているプラネット・ヘンプの「Os Caes Ladrem Mass A Caravana Nao Pra」が試聴機なんかに並んで入っていて、ブラジルのラップということで宣伝されているが、TOWER RECORDSの発行する無料宣伝紙 bounce 6月版ににガブリエル・オ・ペンサドールとマルセロ・D2の比較記事が載っていた。私はガブリエルの方がよいと思うが、彼は以下のように評している。
「ハシオナイスの歌詞はいいよね。黒人と低所得者層にメッセージを送って成功している。興味深いと思う。プラネット・ヘンプについては、あんまりちゃんと歌詞を聴いたことがない。ラディカリズム、過激なことが人々の考えや心を開く一番よい方法だとは思わない。たまに、彼らが過激じゃないほうがもっと効果があるのにと思うことがあるよ」
これに対し、マルセロ・D2は「ガブリエル・オ・ペンサドールはもっとポップだと思う。ストリートのヒップホップとは違う」と言っているが、聴きやすい音楽に仕上がっているという意味だろう。ガブリエルの方は明らかにプラネット・ヘンプについては否定的で、歌詞についても、聴く程のものでないと回答しているに等しい。この辺りについて、ラティーナ7月号に以下のようなことも言っている。
ポーズをつくって、ちょっと乱暴な歌詞を書けば、聞いてる側を惑わすのは簡単だ。今の若者には理想とか、あんまりないんだ。(中略)集団としての理想ってのがない。個人至上主義的なんだ。だから、音楽の歌詞も陳腐化している。みんなビジュアルを追っているだけさ。反抗的なビジュアルがあればいいんだよ(25頁)
ガブリエルは母が著名なジャーナリストで父が政府高官という環境で生まれたので、他のラッパーよりは言葉は上手であろう。しかし、彼の音楽がよいのは歌詞の為だけではない。むしろ言葉や国家が違う日本で聞くとき、彼の言葉でさえリアルではない。しかし、いみじくもマルセロ・D2が言ったように、彼の音楽には"ポップ"な要素が十分に含まれており、現代のポップミュージックとして聞くことができる。ポピュラー音楽というものが分かっているのだ。ラティーナから数箇所引用しよう。
ツアー・ビデオには、町で出会ったポルトガル人のおばさんが、「TVで見たけど、あんたの歌は面白いねー。あんなのは初めてだよ、なんていうのかい、ああいうのは」と話しかけてきて、ガブリエルが「ラップだよ」と答えているシーンがある。同じようにブラジル本国でも、ラップなんかまったく関係なさそうなおじさん世代から「君のアルバム聞いたけど、ありゃ面白いね」と言われることがあるそうだ。(23頁)
ラップじゃなきゃダメだとか、思わない。(24頁)
僕にとっては歌詞が一番大事だけど、自分がやっているのは音楽でもあるんだって。その音楽を聴いて気に入ってくれる人がいるってのは、歌詞がわからなくても、僕の曲で踊ってくれるなら、サイコーじゃないかって。(25頁)
ポルトガル語圏の人は歌詞が面白くて聴いている場合も多いだろうが、やはり曲の面白さは大きいと思う。「Quebra - Cebeca」の3曲目"CACHIMBO DA PAZ"はホール&オーツの"One On One"をサンプリングしているが、続けて4曲目を聴くと何かに似ているなあと感じた。プリンスに似ているのだ。プリンスに似ていることは重要である。ポピュラー音楽を捉える上で見逃せない音楽をプリンスが作ったからである。一言で言えば、ソウルでポップなのである。
bounce ISSUE 199/JUNE 1999, TOWER RECORDS, 1999/6
P40~41, 高橋道彦(文/インタビュー), 「ガブリエル・オ・ペンサドール+マルセロ・D2」
ラップじゃなきゃダメだとか、思わない。(24頁)
僕にとっては歌詞が一番大事だけど、自分がやっているのは音楽でもあるんだって。その音楽を聴いて気に入ってくれる人がいるってのは、歌詞がわからなくても、僕の曲で踊ってくれるなら、サイコーじゃないかって。(25頁)
bounce ISSUE 199/JUNE 1999, TOWER RECORDS, 1999/6
P40~41, 高橋道彦(文/インタビュー), 「ガブリエル・オ・ペンサドール+マルセロ・D2」
ミルトン・ナシメント『アミーゴ・エ・コイザ・プラ・セ・グァルダール』(CD Box)
Milton Nascimento, "AMIGO E COISA PRA SE GUARDAR...", PolyGram(Brazil), 1997
青い色の箱に入った10枚組みのCDボックスで、PolyGramから出た初期の作品がセットになっています。箱は木箱模様になっており、棚などに置くのにとてもよい感じです。他のアーチストの物も違う色で流通しており、私は春頃に入手しました。単独でも入手可能な作品が多いですが、EMI盤でない『ミルトン』(『Milton (USA)』)と『ジャーニー・トゥ・ドーン』は初めて見ました。ミルトン・ナシメント初期作品を一度に入手できるのでお買い得だと思います。内容は以下の10作品で、ボーナストラックとなっている曲だけ書き出しました。このセットでしか聞けないトラックでもないですが、比較される方は参考になさってください。(1行目:タイトル, 推定発表年、2行目:収録盤の情報)(1999/9/24)
- コーリッジ, 1968
COURAGE, PolyGram 393 019-2 A&M(Brazil), 1969
- ミルトン, 1976
MILTON, PolyGram 394 611-2(Brazil), 1976
- ジャーニー・トゥ・ドーン, 1979
journey to dawn, PolyGram 394 719-2, 1979
- センチネーラ - 1980
SENTINELA, PolyGram 813 357-2(Brazil), 1980
- カカドール・ヂ・ミム, 1981
Cacador De Mim, PolyGram 837 258-2(Brazil) , 1981
- ミッサ・ドス・キロンボス, 1982
MISSA DOS QUILOMBOS, PolyGram 811 500-2(Brazil), 1982/1995
* bonus trak
1. ABERTURA
10.RASA
14.PAI GRANDE
15.ONY SARUE
- アニマ, 1982
anima, PolyGram 813 296-2(Brazil), 1982
- アオ・ヴィーヴォー, 1983
ao vivo, PolyGram 817 307-2(Brazil), 1983
- エンコントロス・イ・デスペディダス, 1985
ENCONTROS E DESPEDIDAS, PolyGram 827 638-2(Brazil), 1985
* bonus trak
7. PRA EU PARAR DE ME DOER
- ア・バールカ・ドス・アマンチス, 1987 (ライブ盤)
A BARCA DOS AMANTES, PolyGram 831 349-2(Brazil), 1986
参考:ミルトン・ナシメント作品目録
- コーリッジ, 1968
COURAGE, PolyGram 393 019-2 A&M(Brazil), 1969 - ミルトン, 1976
MILTON, PolyGram 394 611-2(Brazil), 1976 - ジャーニー・トゥ・ドーン, 1979
journey to dawn, PolyGram 394 719-2, 1979 - センチネーラ - 1980
SENTINELA, PolyGram 813 357-2(Brazil), 1980 - カカドール・ヂ・ミム, 1981
Cacador De Mim, PolyGram 837 258-2(Brazil) , 1981 - ミッサ・ドス・キロンボス, 1982
MISSA DOS QUILOMBOS, PolyGram 811 500-2(Brazil), 1982/1995
* bonus trak
1. ABERTURA
10.RASA
14.PAI GRANDE
15.ONY SARUE - アニマ, 1982
anima, PolyGram 813 296-2(Brazil), 1982 - アオ・ヴィーヴォー, 1983
ao vivo, PolyGram 817 307-2(Brazil), 1983 - エンコントロス・イ・デスペディダス, 1985
ENCONTROS E DESPEDIDAS, PolyGram 827 638-2(Brazil), 1985
* bonus trak
7. PRA EU PARAR DE ME DOER - ア・バールカ・ドス・アマンチス, 1987 (ライブ盤)
A BARCA DOS AMANTES, PolyGram 831 349-2(Brazil), 1986
参考:ミルトン・ナシメント作品目録
この夏はウェス・モンゴメリー
夏といえばボサノヴァなのですが、昨年は小野リサの「BOSSA CARIOCA」(1998/07/18,東芝EMI/TOCT-10344)が出たり、ジョアン・ジルベルトの作品が再発売されたりと、ボサノヴァ40周年だけあって凄かったのですが、今年はそれを上回る勢いはなさそうです。小野リサの今夏の作品「DREAM」(1999/06/23,東芝EMI/TOCT-24153)は感じよいジャズ・ボサで相変わらずよいのですが、ポピュラーとジャズと言えば、やはりウェス・モンゴメリーを改めて思い出さずにはいられません。ジャズファンは「Full House」(1962/06/25 rec.)や「The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery」(1960/01/26+28 rec.)を評価するようですが、ポピュラー曲の演奏としては以下の作品がよいです。
* カリフォルニア・ドリーミング(California Dreaming),1966/09/14-16 rec.
* ア・デイ・イン・ザ・ライフ(A Day in the Life),1967/06/06-26 rec.
* ダウン・ヒアー・オン・ザ・グラウンド(Down Here on the Ground),1967/12/20-1968/01/26 rec.
* ロード・ソング(Road Song),1968/05/07-09 rec.
米国のポピュラーにおける「ソウル」と「フォーク」
なかでも「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」と遺作(45歳で心臓発作で死去)となった「ロード・ソング」がよいと思います。ビートルズのカバーは沢山あるものの、オリジナルと違う良さ(本当の良さ)のある曲は希ですが、「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」はとてもよい演奏です。ドン・セベスキー(Don Sebesky)の編曲・アレンジも確かによいのですが、これだけしみじみくる演奏ができるということは、やはりウェスのポピュラー音楽を演奏する資質が大きいと思います。そもそもジャズも広義ポピュラー音楽の一種でありますし、特に米国のポピュラーにおいては、私見ですが、ソウルとフォークが出来なければジャズにおいても味のある演奏は出来ないと思います。ソウル、ブルースなどのブラックは米国の音楽の原点でもあり分かり易い要素ですが、一方でフォークの要素を忘れてはならないと思います。フォークにはアメリカ合衆国の想い出というか、サウダーヂみたいなものがあって、忘れられない曲には欠かすことのできない要素です。他の名曲の具体例としてはキース・ジャレットの「マイ・バック・ページズ」(*1)が挙げられるでしょう。この曲の原曲はボブ・デュランで、見事にジャズとして演奏した作品です。
*1 Keith Jarrett Trio,Somewhere Before,1968/10/30-31 rec.,"My Back Pages"(5'17)
*2 Keith Jarrett Trio=Keith Jarrett(p),Charlie Haden(b),Paul Motian(ds)
この夏はウェス・モンゴメリーのポピュラー音楽演奏の諸作を聴いて、秋にはジョージ・ベンソン(George Benson)の「マスカレード」(I'm Afraid The Masquerade Is Over)あたりを聴くというのが今年はよいのではないでしょうか。(1999/8/1)
* カリフォルニア・ドリーミング(California Dreaming),1966/09/14-16 rec.
* ア・デイ・イン・ザ・ライフ(A Day in the Life),1967/06/06-26 rec.
* ダウン・ヒアー・オン・ザ・グラウンド(Down Here on the Ground),1967/12/20-1968/01/26 rec.
* ロード・ソング(Road Song),1968/05/07-09 rec.
米国のポピュラーにおける「ソウル」と「フォーク」
なかでも「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」と遺作(45歳で心臓発作で死去)となった「ロード・ソング」がよいと思います。ビートルズのカバーは沢山あるものの、オリジナルと違う良さ(本当の良さ)のある曲は希ですが、「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」はとてもよい演奏です。ドン・セベスキー(Don Sebesky)の編曲・アレンジも確かによいのですが、これだけしみじみくる演奏ができるということは、やはりウェスのポピュラー音楽を演奏する資質が大きいと思います。そもそもジャズも広義ポピュラー音楽の一種でありますし、特に米国のポピュラーにおいては、私見ですが、ソウルとフォークが出来なければジャズにおいても味のある演奏は出来ないと思います。ソウル、ブルースなどのブラックは米国の音楽の原点でもあり分かり易い要素ですが、一方でフォークの要素を忘れてはならないと思います。フォークにはアメリカ合衆国の想い出というか、サウダーヂみたいなものがあって、忘れられない曲には欠かすことのできない要素です。他の名曲の具体例としてはキース・ジャレットの「マイ・バック・ページズ」(*1)が挙げられるでしょう。この曲の原曲はボブ・デュランで、見事にジャズとして演奏した作品です。
*1 Keith Jarrett Trio,Somewhere Before,1968/10/30-31 rec.,"My Back Pages"(5'17)
*2 Keith Jarrett Trio=Keith Jarrett(p),Charlie Haden(b),Paul Motian(ds)
この夏はウェス・モンゴメリーのポピュラー音楽演奏の諸作を聴いて、秋にはジョージ・ベンソン(George Benson)の「マスカレード」(I'm Afraid The Masquerade Is Over)あたりを聴くというのが今年はよいのではないでしょうか。(1999/8/1)
ミルトン・ナシメント「クルーナー」
カバー曲ばかりのおもしろいアルバムで、マイケル・ジャクソンの「ビート・イット」などに先ず興味がひかれました。アルバムとしてはミルトン・ナシメントの代表作にはならないでしょうが、なぜこのような作品を作ったかについて邦盤で解説されており、ミルトン自身が若い頃よく聴いたポピュラー曲を改めて振り返る意図があるようです。
前作の「タンボール・ヂ・ミナス」は最後の力かも知れないと思わせる迫力があり、その前の「ナシメント」は当時のミルトンの状態のせいか、もう死んでしまうのではないだろうかと思えるような非常に印象深い作品でしたが、今回は聴き易く落ち着いた感じです。しかし、想い出の曲を振り返るということに悪い予感がしなくもありません。カバーとして他に印象的な曲として、「オ・プラネタ・ブル・ナ・エストラーダ・ド・ソル」(1991)の「ハロー・グッバイ」などがあります。MPBアーチストのビートルズのカバーにはよいものが多くて、カターノ・ヴェローゾの「ヘルプ・ミー」なんかも素晴らしい演奏です。これらは日本も含め腐る程ある、安易でカラオケ的なビートルズのカバーとは全く違うものです。(1999/8/1)
参考:ミルトン・ナシメント作品目録
前作の「タンボール・ヂ・ミナス」は最後の力かも知れないと思わせる迫力があり、その前の「ナシメント」は当時のミルトンの状態のせいか、もう死んでしまうのではないだろうかと思えるような非常に印象深い作品でしたが、今回は聴き易く落ち着いた感じです。しかし、想い出の曲を振り返るということに悪い予感がしなくもありません。カバーとして他に印象的な曲として、「オ・プラネタ・ブル・ナ・エストラーダ・ド・ソル」(1991)の「ハロー・グッバイ」などがあります。MPBアーチストのビートルズのカバーにはよいものが多くて、カターノ・ヴェローゾの「ヘルプ・ミー」なんかも素晴らしい演奏です。これらは日本も含め腐る程ある、安易でカラオケ的なビートルズのカバーとは全く違うものです。(1999/8/1)
参考:ミルトン・ナシメント作品目録
ミルトン・ナシメント「ア・セヂ・ヂ・ペイシ」(ビデオ作品)
フリーペーパー「MBB」でも取り上げられた当作品ですが、非常に念入りに作られた映像作品です。南米諸国の映像感覚の良さも感じます。内容はミルトンと関係するアーティストとの共演で綴られており、どれも興味深いです。私などはCDで名前だけ知っていて顔を知らない人がたくさんいたので勉強にもなりました。カエターノ・ベローゾとのデュオ(A Terceira Margem do Rio)などある意味非常に興味深いのではないでしょうか。
全体に感じることは沢山のアーチストがミルトン・ナシメントの為にいろいろなよい音楽や演奏を提供しているのだなあということです。ミルトンはリーダーとしてそれ程強いプロデュース力を発揮しているようには思えないのですが、彼の周りには沢山のよい芸術家が集まってくるようで、そういった人を引き寄せる魅力に富んだ人物なのだと思います。
ミルトンの映像として公開されているものは少ないと思います。ライブ・アンダー・ザ・スカイ97の様子がテレビ放映映像されたこともありましたが、もう昔のことです。他のブラジル音楽関連のビデオにも登場しているのかも知れませんが、よく調べてません。(1999/8/1)
参考:ミルトン・ナシメント作品目録
全体に感じることは沢山のアーチストがミルトン・ナシメントの為にいろいろなよい音楽や演奏を提供しているのだなあということです。ミルトンはリーダーとしてそれ程強いプロデュース力を発揮しているようには思えないのですが、彼の周りには沢山のよい芸術家が集まってくるようで、そういった人を引き寄せる魅力に富んだ人物なのだと思います。
ミルトンの映像として公開されているものは少ないと思います。ライブ・アンダー・ザ・スカイ97の様子がテレビ放映映像されたこともありましたが、もう昔のことです。他のブラジル音楽関連のビデオにも登場しているのかも知れませんが、よく調べてません。(1999/8/1)
参考:ミルトン・ナシメント作品目録
『ゲッツ/ジルベルト』は名作か?(増補)
※記事の公開後の補足はこちら。 名盤と紹介され、愛聴盤としている音楽家も多いこの作品について、『ユリイカ 特集ボサノヴァ』(1998年6月号) の中原仁氏のディスクガイドで以下のように紹介されました。
プロデューサーのクリード・テイラーは5分以上に及ぶ「イパネマの娘」をシングルとして発売する際、なんと主役であるジョアンのヴォーカル部分をカットし、あたかもゲッツとアストラッドがメインであるように改ざんしてしまったが、それが結果的に大ヒットしグラミーまで受賞するという皮肉。むしろゲッツの腑抜けたサックス・ソロを全面カットしたエディット・ヴァージョンを作った方が、音楽的にはあるかに高品位なのだが、いわゆる"歴史的名盤にはえてしてキナ臭い話がつきものだ。
(233~234頁)*1
『ヴィヴァ!ボサノーヴァ』(1998/9、ミュージック・マガジン刊)でも同様の批判見られますが、こちらはちょっと書き方に品がありません。
『ボサノヴァの歴史』におけるゲッツ批判
さて、このあたりの批判は『ボサノヴァの歴史』(絶版)*2 から始まると思われ、これを読んでみますと、ジルベルトとゲッツがレコーディング最中険悪だったことが書かれてあり*3、間に立ったジョビンも気を遣って苦労したようです*4。その他いろいろ調べた限りでは”スタン・ゲッツはサンバが判っていない”ということがジルベルトを怒らせた原因のようで、それゆえ作品は不完全な音楽になってしまった、ということだと私は理解してます。ゲッツが何を考えていたかは不明です。
ジルベルトの極めて頑固な一面も災いしたような気もしますが、ブラジル音楽の為にステージ上でのズボンの折り目に注意深く気を配るなど、米国においてブラジルが低く見られないようかなり神経を遣っていたジルベルトからすれば(『ボサノヴァの歴史』)ゲッツは少々許せない存在だったのでしょう。
中原氏にお伺いしたこと
ユリイカの記事について、プラッサ・ド・ブラジルの後、中原氏ご本人にお聞きしたことがあって、気分のよいイベントの後なのでそんなに真剣に議論した訳ではありませんが、「やっぱりあれは腑抜けた演奏でしょうか?」とお聞きしました。その時は笑っておられましたが、あまり感心できる演奏ではないと考えていらっしゃるようです(記事補足参照)。ただし、中原氏はやはり大変鋭い批評眼をお持ちなので、ゲッツの実力が分かっていない訳ではないようで、不本意な成立事情と音楽についての問題を投げかけた形になったのはその為かも知れません。
ゲッツの良い演奏
腑抜けた演奏かどうか、私自身は批判を読んだとき、「なるほど、そういうふうにも聴けるなあ」と思いました。『ゲッツ/ジルベルト』は繰り返し聞いたレコードですが、この作品には何か悶々と宿るある種のわだかまり(不完全さ、吹っ切れなさ)があり、中原氏の批評はこれを言い当てていると思います。スタン・ゲッツの他の作品を聴くようになれば気が付くと思いますが、ゲッツはもっと颯爽と吹きまくる方が似合っていて、ボサノバをやる以前や以後の方がかっこよいのです。ジャズ評論家の多くは『ゲッツ/ジルベルト』をゲッツの代表作にしていますが、中山康樹氏は『JAZZ名盤名勝負』*5において『キャプテン・マーベル』を(最もよい)”この一枚”に挙げてました*6。これはスタン・ゲッツ評の白眉だと思います。中原氏もバップの頃のスタン・ゲッツの方が好きだとおっしゃっていたので、スタン・ゲッツに対するこのあたりの見方は中山氏評をと一致していると思います。
ボサノヴァとジャズの融合について
ボサノヴァとジャズが合わさったレコードは沢山あり、フランク・シナトラなんかもアントニオ・カルロス・ジョビンの共演作品も残しています。シナトラ追悼特集なんかを読んでいると、これを代表作に挙げる人も多かったですが、私はシナトラの本領発揮とは思えません。そこで、中原さんにさらに質問させて戴いて、「ボサノバとジャズの融合みたいなレコードは沢山ありますが、あまり好いのがないと思います。この辺りについてはどう思われますか?」、とお聞きしたところ、「うーん、そうだね、やはり確かに(融合は)難しいようで、あまり成功していない」というようなことをおっしゃってました。(セリフは私の数ヶ月も前の記憶です。)
中原氏は数少ない成功例として丁度その頃同氏の解説付きで発売されたバド・シャンクの『バド・シャンク&ヒズ・ブラジリアン・フレンズ』を挙げられました(記事補足参照)。「テナーよりもアルトの方がボサノバに合うのでしょう」とのことで、確かにこれは成功例だと思います。『ゲッツ/ジルベルト』独特の感触は確かによいのですが、こちらの方が完成された好い作品です。”サンバがあるから”なんでしょうか。
注(参考文献)
*1 『ユリイカ 特集ボサノヴァ』,1998年6月号,青土社
*2 ルイ・カストロ著/国安真奈訳,『ボサノヴァの歴史』,1992/9/20,JICC出版局,A5判,477頁+41頁(2001/2/10音楽之友社より再刊)
*3 『ボサノヴァの歴史』370頁~374頁参照
*4 エレーナ・ジョビン著/国安 真奈訳『アントニオ・カルロス・ジョビン ボサノヴァを創った男』,1998/10,青土社,判型4-6,460頁,3200円,ISBN4-7917-5667-3
*5 中山康樹著『JAZZ名盤名勝負』,1993,廣済堂出版,1300円
*6 『JAZZ名盤名勝負』65頁~70頁
参考作品
スタン・ゲッツ/ジョアン・ジルベルト,『ゲッツ/ジルベルト』,1963/3/18-19(録音)
Stan Getz/Joao Gilberto,Getz/Gilberto,1963/3/18-19(録音)
バド・シャンク,『バド・シャンク&ヒズ・ブラジリアン・フレンズ』,1998/8/7,東芝EMI TOCP-50643,1820円
Bud Shank,Bud Shank & His Brazilian Friends,1965(録音)
スタン・ゲッツ,『キャプテン・マーベル』,1972/3/3(録音),
Stan Getz,Captain Marvel,1972/3/3(録音),
スタン・ゲッツ,『スイート・レイン』,1967/3/21-30(録音),
Stan Getz,Sweet Rain,1967/3/21-30(録音),
補足
『ボサノヴァの歴史』は絶版なので購入するのは難しいですが、都内の公立図書館に何冊もありますし、他の県市町村にもあると思われます。
(1999/2/16、1999/2/25修正)
*** 記事補足 ***
「ジャズマンとボサノヴァ人の共演作」のベスト
中原さん自身はポール・ウィンターとカルロス・リラの「ザ・サウンド・オブ・イパネマ」がベストと考えられているとのことです(1999/03/08/email)。ポール・ウィンターについて、ニューエイジとか、最近ではヒーリングミュージックとか呼び得る音楽をやっている人という思い込みがあって、ブラジル音楽との関連について注意してませんでしたが、この機会に「リオ」と併せて買って聞いてみると、とても自然な演奏でとても良かったです。北米のジャズと南米のラテンは内に秘めたリズムが異なると思うので、どちらかに妥協すればあたり障りのない作品に終わってしまう可能性があると思うのですが、この両者の場合は上手く合っているように思います。2枚とも邦盤で安く流通してますし、カルロス・リラ(Carlos Lira)も最近日本で復刻盤が出ているので、集めて聴いてみたいところです。
ポール・ウインター(Paul Winter),ザ・サウンド・オブ・イパネマ(The Sound of Ipanema),1965,
ポールウインター/Luiz Bonfa/R.Menescal/L.Eca,リオ(Rio),1965(1996/CD),
『ゲッツ/ジルベルト』評
3月にEメールで中原さんにお聞きしたところ、このアルバムは「決して駄作ではなく、長年世界中で愛されているだけの事はあ」り、「ジョアンや準主役のジョビンのパフォーマンスは聴きごたえ充分」で、「録音のクォリティや声と楽器のバランスなどハード面に関しては、それ以前のジョアンのブラジル録音盤を上回る」と評されました。また、このアルバムの好影響は軽視できないものの、ゲッツの演奏自体はやはりあの「音楽空間の中では「ハズシ」てる」という印象をお持ちだそうです。ユリイカの記事とこの評を合わせると、より一層このアルバムの性質が明らかになると思います。私自身はこのアルバムが出た当時の、いろんな意味での驚きを体験していないので、ゲッツの面白みが足りないなあと思ったところからこのアルバムを聞きなおし、ユリイカの中原氏評を読んで考えを整理しました。名作は聞きなおすと面白いものです。
1998年の記事(233~234頁)*1
『ボサノヴァの歴史』におけるゲッツ批判
さて、このあたりの批判は『ボサノヴァの歴史』(絶版)*2 から始まると思われ、これを読んでみますと、ジルベルトとゲッツがレコーディング最中険悪だったことが書かれてあり*3、間に立ったジョビンも気を遣って苦労したようです*4。その他いろいろ調べた限りでは”スタン・ゲッツはサンバが判っていない”ということがジルベルトを怒らせた原因のようで、それゆえ作品は不完全な音楽になってしまった、ということだと私は理解してます。ゲッツが何を考えていたかは不明です。
ジルベルトの極めて頑固な一面も災いしたような気もしますが、ブラジル音楽の為にステージ上でのズボンの折り目に注意深く気を配るなど、米国においてブラジルが低く見られないようかなり神経を遣っていたジルベルトからすれば(『ボサノヴァの歴史』)ゲッツは少々許せない存在だったのでしょう。
中原氏にお伺いしたこと
ユリイカの記事について、プラッサ・ド・ブラジルの後、中原氏ご本人にお聞きしたことがあって、気分のよいイベントの後なのでそんなに真剣に議論した訳ではありませんが、「やっぱりあれは腑抜けた演奏でしょうか?」とお聞きしました。その時は笑っておられましたが、あまり感心できる演奏ではないと考えていらっしゃるようです(記事補足参照)。ただし、中原氏はやはり大変鋭い批評眼をお持ちなので、ゲッツの実力が分かっていない訳ではないようで、不本意な成立事情と音楽についての問題を投げかけた形になったのはその為かも知れません。
ゲッツの良い演奏
腑抜けた演奏かどうか、私自身は批判を読んだとき、「なるほど、そういうふうにも聴けるなあ」と思いました。『ゲッツ/ジルベルト』は繰り返し聞いたレコードですが、この作品には何か悶々と宿るある種のわだかまり(不完全さ、吹っ切れなさ)があり、中原氏の批評はこれを言い当てていると思います。スタン・ゲッツの他の作品を聴くようになれば気が付くと思いますが、ゲッツはもっと颯爽と吹きまくる方が似合っていて、ボサノバをやる以前や以後の方がかっこよいのです。ジャズ評論家の多くは『ゲッツ/ジルベルト』をゲッツの代表作にしていますが、中山康樹氏は『JAZZ名盤名勝負』*5において『キャプテン・マーベル』を(最もよい)”この一枚”に挙げてました*6。これはスタン・ゲッツ評の白眉だと思います。中原氏もバップの頃のスタン・ゲッツの方が好きだとおっしゃっていたので、スタン・ゲッツに対するこのあたりの見方は中山氏評をと一致していると思います。
ボサノヴァとジャズの融合について
ボサノヴァとジャズが合わさったレコードは沢山あり、フランク・シナトラなんかもアントニオ・カルロス・ジョビンの共演作品も残しています。シナトラ追悼特集なんかを読んでいると、これを代表作に挙げる人も多かったですが、私はシナトラの本領発揮とは思えません。そこで、中原さんにさらに質問させて戴いて、「ボサノバとジャズの融合みたいなレコードは沢山ありますが、あまり好いのがないと思います。この辺りについてはどう思われますか?」、とお聞きしたところ、「うーん、そうだね、やはり確かに(融合は)難しいようで、あまり成功していない」というようなことをおっしゃってました。(セリフは私の数ヶ月も前の記憶です。)
中原氏は数少ない成功例として丁度その頃同氏の解説付きで発売されたバド・シャンクの『バド・シャンク&ヒズ・ブラジリアン・フレンズ』を挙げられました(記事補足参照)。「テナーよりもアルトの方がボサノバに合うのでしょう」とのことで、確かにこれは成功例だと思います。『ゲッツ/ジルベルト』独特の感触は確かによいのですが、こちらの方が完成された好い作品です。”サンバがあるから”なんでしょうか。
注(参考文献)
*1 『ユリイカ 特集ボサノヴァ』,1998年6月号,青土社
*2 ルイ・カストロ著/国安真奈訳,『ボサノヴァの歴史』,1992/9/20,JICC出版局,A5判,477頁+41頁(2001/2/10音楽之友社より再刊)
*3 『ボサノヴァの歴史』370頁~374頁参照
*4 エレーナ・ジョビン著/国安 真奈訳『アントニオ・カルロス・ジョビン ボサノヴァを創った男』,1998/10,青土社,判型4-6,460頁,3200円,ISBN4-7917-5667-3
*5 中山康樹著『JAZZ名盤名勝負』,1993,廣済堂出版,1300円
*6 『JAZZ名盤名勝負』65頁~70頁
参考作品
スタン・ゲッツ/ジョアン・ジルベルト,『ゲッツ/ジルベルト』,1963/3/18-19(録音)
Stan Getz/Joao Gilberto,Getz/Gilberto,1963/3/18-19(録音)
バド・シャンク,『バド・シャンク&ヒズ・ブラジリアン・フレンズ』,1998/8/7,東芝EMI TOCP-50643,1820円
Bud Shank,Bud Shank & His Brazilian Friends,1965(録音)
スタン・ゲッツ,『キャプテン・マーベル』,1972/3/3(録音),
Stan Getz,Captain Marvel,1972/3/3(録音),
スタン・ゲッツ,『スイート・レイン』,1967/3/21-30(録音),
Stan Getz,Sweet Rain,1967/3/21-30(録音),
補足
『ボサノヴァの歴史』は絶版なので購入するのは難しいですが、都内の公立図書館に何冊もありますし、他の県市町村にもあると思われます。
(1999/2/16、1999/2/25修正)
*** 記事補足 ***
「ジャズマンとボサノヴァ人の共演作」のベスト
中原さん自身はポール・ウィンターとカルロス・リラの「ザ・サウンド・オブ・イパネマ」がベストと考えられているとのことです(1999/03/08/email)。ポール・ウィンターについて、ニューエイジとか、最近ではヒーリングミュージックとか呼び得る音楽をやっている人という思い込みがあって、ブラジル音楽との関連について注意してませんでしたが、この機会に「リオ」と併せて買って聞いてみると、とても自然な演奏でとても良かったです。北米のジャズと南米のラテンは内に秘めたリズムが異なると思うので、どちらかに妥協すればあたり障りのない作品に終わってしまう可能性があると思うのですが、この両者の場合は上手く合っているように思います。2枚とも邦盤で安く流通してますし、カルロス・リラ(Carlos Lira)も最近日本で復刻盤が出ているので、集めて聴いてみたいところです。
ポール・ウインター(Paul Winter),ザ・サウンド・オブ・イパネマ(The Sound of Ipanema),1965,
ポールウインター/Luiz Bonfa/R.Menescal/L.Eca,リオ(Rio),1965(1996/CD),
『ゲッツ/ジルベルト』評
3月にEメールで中原さんにお聞きしたところ、このアルバムは「決して駄作ではなく、長年世界中で愛されているだけの事はあ」り、「ジョアンや準主役のジョビンのパフォーマンスは聴きごたえ充分」で、「録音のクォリティや声と楽器のバランスなどハード面に関しては、それ以前のジョアンのブラジル録音盤を上回る」と評されました。また、このアルバムの好影響は軽視できないものの、ゲッツの演奏自体はやはりあの「音楽空間の中では「ハズシ」てる」という印象をお持ちだそうです。ユリイカの記事とこの評を合わせると、より一層このアルバムの性質が明らかになると思います。私自身はこのアルバムが出た当時の、いろんな意味での驚きを体験していないので、ゲッツの面白みが足りないなあと思ったところからこのアルバムを聞きなおし、ユリイカの中原氏評を読んで考えを整理しました。名作は聞きなおすと面白いものです。
ブラジル音楽草 >記事 >1998年の記事
1998年の記事
update:1999,9,23(Thu)目次
- プラッサ・ド・ブラジル vol.15 (1998/7/27)レポート
- 音楽雑誌のブラジル特集
- ブラジルのリズム(マルコス・スザーノ・レッスンビデオより)
- 夏はやっぱりボサノヴァ?
- ネルソン・ゴンサルヴィス(Nelson Goncalves)死去
- 『ユリイカ 1998年6月号』特集ボサノヴァ
- フランク・シナトラ死去
- プレミオ・シャープ(The 11th Sharp Awards in Brazilian Music)
- シコ・ブアルキ、ピアソラの未完成曲の権利得る
- Praca do Brasil vol.12 (1998/4/27,プラッサ・オンゼ)レポート
- Praca do Brasil vol.11 (1998/3/30,プラッサ・オンゼ)レポート
記事
プラッサ・ド・ブラジル vol.15 (1998/7/27)レポート
Praca do Brasil vol.15 (場所:プラッサ・オンゼ)ナヴィゲーター/中原仁氏(ARTENIA)、原田千佳氏(Latina)
1, ペデロ・ルイス&パレーヂ ビデオ・クリップ「PENA DE VIDA」上映
音楽同様、勢いと迫力ある映像でした。アメリカや日本の音楽家と違ってハングリーな感じがします。痩せていて、目つきが鋭く・・・貧乏なのか金持ちなのかどうかは知りませんが。私はブラジルのロックバンド時代の到来だと感じてます。アルバム「アストロナウタ・トゥビー」の日本語版はボーナストラック2曲付き。2, ジョイスが司会の音楽番組「CANTOS DO RIO」紹介
ブラジルで放映しているらしく、ゆとりのあるいい感じの番組です。紹介して戴いた映像は小野リサが出演していて、パウロ・ジョビン、ダニエル・ジョビンと共にスタジオで練習(?)している風景でした。ボサノヴァを歌っているのですが、とても自然な感じで、この「自然な感じ」こそボサノヴァだと中原氏は解説しておられました。3, 特集1 祝来日! ジルベルト・ジル
フランスのテレビ局制作の1987年のドキュメント映像上映。俳優グランヂ・オテロとバイーアの海を眺めての対談や、バイーアについて思いや、カエターノ・ヴェローゾとトロピカリズモを振り返って対談、カーニヴァル、フィーリョス・ヂ・カンヂーの行進の映像があり、その間に曲の演奏がある、というようなビデオでした。演奏にはギターを持ってのソロ演奏もありとても良かったです。歌の上手い人のシンプルな演奏はよいものです。各対談の内容ですが、バイーアについて、世界のいろいろな街も好きだがバイーアは離れがたい、自分の故郷だ、とサルバドールの丘で話してました。対談に続いて"VIRAMUNDO"のソロ演奏がありましたが、まさに郷愁歌であると感じました。カエターノとのトロピカリズモの回想については、カエターノが音楽以外のいろいろな要素を含めて運動を進めた点が凄いとジルが誉めれば、ジルの音楽や歌の才能の凄さをカエターノが誉めたり、といったような互いに誉め合うような会話でしたが、お世辞ではなく、お互い意識し合い影響を与え合ったようです。まあ今更そこまで誉めなくても・・・という感じはありましたが、幾ら誉めても誉めたりないのでしょう。
ジルの歌はアフリカをルーツとする天性のものである、と中原さんの解説がありました。確かにビデオの中でジル自身バイーアがルーツと言ってますし、バイーアを更に遡ればバイーアの血からアフリカの血へと行きつき、これがジルの歌の本質だと思います。アフリカの大地から生まれたリズムを内包した歌ということです。イベント終了後、さらに中原さんにお話を伺うことができたのですが、「ジルの歌は若い頃の方がもっと凄く、白人系の人(例えばカエターノ)は歳をとっても声が衰えないが、アフリカ系の人はどうしても早く衰えてしまう、天性ゆえ仕方がないのだろう・・・。」「もちろん、今も素晴らしいのだけど!」というようなことをおっしゃてました。天性というのは生まれ持っているだけに、自然に衰えるのを止めることはできないのでしょう。ミルトン・ナシメントが痩せて、「本来の横隔膜を振るわせる声がちょっと弱くなったかなあ・・・」という話もあり、こちらは病気が原因だと思いますが、考え合わせると心配になってきます。
4, 特集2 ボサノヴァ誕生40周年
(1)1992年、ジョアン・ジルベルトとアントニオ・カルロス・ジョビンの共演(2)独占収録初公開!ジョアン・ジルベルト・ライヴ(1997年10月)
ブエノスアイレスでのコンサートをデジタルビデオで収録したもの。31分。 次回は8月31日(月)、特集「これがパゴーヂだ!」(バランザによる実演あり)だそうです。
過去のレポートはこちらです。
vol.15 (1998/7/27)
vol.12 (1998/4/27) , vol.11 (1998/3/30) at プラッサ・オンゼ(青山)
vol.13 (1998/5/25)、vol.14 (1998/6/29)はレポートなし
音楽雑誌のブラジル特集
この7月に発売された幾つかの音楽雑誌(8月号)でブラジル関連記事多く掲載されております。最後の「CDジャーナル」を除いて、記事はブラジル音楽の現状紹介、レニーニ&スザーノのライブ紹介並びにレニーニのインタビュー記事が主です。
他はどれも5頁程度の記事であり、ディスクガイドも付いているのですが、全部買うとちょっと出費がかさみますし、本屋で立ち読みか図書館で借りてもよいと思います。カラー写真が綺麗なのは「FM fan」です。レニーニのファンにはインタビュー記事がよい資料になると思います。あと、マルコス・スザーノが紹介したからでしょうが、どの雑誌もペデロ・ルイス&パレーヂを勧めています。
以前のブラジル特集はボサノヴァ、MPB、サンバが主だったですが、ここに来てブラジルのロックが注目され始めたと感じます。(1998/8)
- [1] 「ミュージック・マガジン」1998年8月号, ミュージック・マガジン社刊, 1998, \500
- [2] 「ミュージック・ライフ」1998年8月号, シンコーミュージック刊, 1998, \500
- [3] 「FM fan」1998年No.17,
- [4] 「CDジャーナル」1998年8月, 音楽出版社刊, 1998, \680
中原仁,「連載世界音楽地図都市編23 ベロ・オリゾンチ」, p.120,121
他はどれも5頁程度の記事であり、ディスクガイドも付いているのですが、全部買うとちょっと出費がかさみますし、本屋で立ち読みか図書館で借りてもよいと思います。カラー写真が綺麗なのは「FM fan」です。レニーニのファンにはインタビュー記事がよい資料になると思います。あと、マルコス・スザーノが紹介したからでしょうが、どの雑誌もペデロ・ルイス&パレーヂを勧めています。
以前のブラジル特集はボサノヴァ、MPB、サンバが主だったですが、ここに来てブラジルのロックが注目され始めたと感じます。(1998/8)
18のリズム・バリエーション
ブラジルのリズム(マルコス・スザーノ・レッスンビデオより)
ビデオで紹介されるリズムについてのスザーノ自身の解説を書き出しました。以下の文書をご覧下さい。
18のリズム・バリエーション
ビデオで紹介されるリズムについてのスザーノ自身の解説を書き出しました。以下の文書をご覧下さい。
18のリズム・バリエーション
夏はやっぱりボサノヴァ?
今年はボサノヴァ40周年ということもあるでしょうが、最近ボサノヴァのニュースが多いように感じます。ブラジルは常夏の地域も多いですがサンパウロやリオは冬のはず、しかし、ボサノヴァは今や欧米諸国や日本の音楽という側面があるようです。日本でも復刻版が次々発売され、ボサノヴァの風が形成されつつあるようです。
米国ではレニ・アンドラーヂ(Leny Andrade)の「Bossas Novas」発売がちょっとした話題のよう。アメリカデビュー40周年記念だとか。曲を作っている人はVinicius de Moraes、Roberto Menescal、Billy Blanco、Joao Donato、Carlos Lyra等知ってる名前が多いですが、私はこのCDもレニ・アンドラーヂも聴いた事がないので何とも言えません。
しかし、当のブラジル国内では「時代は"ロック"、"ロックバンド"!」という感じに思えます。私もそうですが、ブラジルのアーチストと言えば個人名が浮かびますが、欧米や日本のポップス同様、バンド単位の音楽が潮流のようです。特にBarao Vermelhoが13枚目の「Puro Extase」を売り出し注目されている模様。不勉強でこれもよく知りませんが、ブラジル音楽も本当に多様になったなあと感じます。そういえば、ストーンズやボブ・ディランのライブもあったそうで、ますますロックが勢いづいている様子です。( 1998,7 )
米国ではレニ・アンドラーヂ(Leny Andrade)の「Bossas Novas」発売がちょっとした話題のよう。アメリカデビュー40周年記念だとか。曲を作っている人はVinicius de Moraes、Roberto Menescal、Billy Blanco、Joao Donato、Carlos Lyra等知ってる名前が多いですが、私はこのCDもレニ・アンドラーヂも聴いた事がないので何とも言えません。
しかし、当のブラジル国内では「時代は"ロック"、"ロックバンド"!」という感じに思えます。私もそうですが、ブラジルのアーチストと言えば個人名が浮かびますが、欧米や日本のポップス同様、バンド単位の音楽が潮流のようです。特にBarao Vermelhoが13枚目の「Puro Extase」を売り出し注目されている模様。不勉強でこれもよく知りませんが、ブラジル音楽も本当に多様になったなあと感じます。そういえば、ストーンズやボブ・ディランのライブもあったそうで、ますますロックが勢いづいている様子です。( 1998,7 )
ネルソン・ゴンサルヴィス(Nelson Goncalves)死去
現地時間4月18日、享年78歳。
残した録音はLPレコード129枚、CD 57枚、カセットテープ200本、45回転シングル盤400枚、78回転シングル盤172枚とのこと。( 1998,7 )
Free Paper「MPB(No.013 Aug.1998)」によれば、60年代~80年代のオリジナル・アルバム12タイトルが一斉にCD化されたとのこと。( 1998,8 )
残した録音はLPレコード129枚、CD 57枚、カセットテープ200本、45回転シングル盤400枚、78回転シングル盤172枚とのこと。( 1998,7 )
Free Paper「MPB(No.013 Aug.1998)」によれば、60年代~80年代のオリジナル・アルバム12タイトルが一斉にCD化されたとのこと。( 1998,8 )
「ユリイカ 特集ボサノヴァ」1998年6月号 [1]
今月(1998年5月現在)のユリイカはボサノヴァ特集です。MPBは聴くけどボサノヴァは聴かないという人も、カエターノ・ヴェローゾの「食人習慣」(トロピカリズモについての随筆、"Verdade Tropical"(1997)の部分訳)など貴重な文献がありますので、目を通されるのがよいでしょう。"Verdade Tropical"は青土社から近々邦訳が出るそうです。芸術について文献を調べる時はやはり芸術家本人の書いた物を読むのが一番です。中原仁氏のディスクガイドも掲載されてます。( 1998,6 )
[1]「ユリイカ 特集ボサノヴァ」1998年6月号、青土社、May 1998、\1300
[1]「ユリイカ 特集ボサノヴァ」1998年6月号、青土社、May 1998、\1300
フランク・シナトラ死去
日本時間5月15日の出来事で誰しもご存知でしょうが、敢えて書きます。
1998年5月14日夜、ロサンゼルスで心臓麻痺の為死亡しました。82歳です。ブラジル音楽との関係と言えば、アントニオ・カルロス・ジョビンとの何枚かの共作レコードがありますが、私はビートルズやボブ・ディラン同様、シナトラの音楽もブラジル音楽に影響を与えたと思ってます。「歌を歌う」という根本的な音楽表現について、ポピュラー音楽を作る上で実践的に参考にしたと思います。アメリカやイギリスのポップスは「歌を歌う」=「歌で勝負する」ことを忘れてしまった感じがありますが、MPBには「歌」が十分あると思います。( 1998,6 )
1998年5月14日夜、ロサンゼルスで心臓麻痺の為死亡しました。82歳です。ブラジル音楽との関係と言えば、アントニオ・カルロス・ジョビンとの何枚かの共作レコードがありますが、私はビートルズやボブ・ディラン同様、シナトラの音楽もブラジル音楽に影響を与えたと思ってます。「歌を歌う」という根本的な音楽表現について、ポピュラー音楽を作る上で実践的に参考にしたと思います。アメリカやイギリスのポップスは「歌を歌う」=「歌で勝負する」ことを忘れてしまった感じがありますが、MPBには「歌」が十分あると思います。( 1998,6 )
プレミオ・シャープ(Premio Sharp / The 11th Sharp Awards in Brazilian Music)
第11回目のこの賞が5月13日に発表されました。私が感じるには、まあ、グラミー賞やレコード大賞のようなもので、ある程度業界の商業的思惑の絡むイベントであると思います。しかし、ブラジル国内での注目度の目安にはなると思います。主な受賞者は次の通り。賞の名前は適当に訳してます。( 1998,6 / 1998,7追補 )
- セガ・バレイロ(Zeca Baleiro)
- ポップ・ロック部門新人賞
- 同 最優秀歌曲賞「バンデイラ(Bandeira)」
- 同 年間アルバム賞「ポル・オンヂ・アンダラ・ステファン・フライ(PorOnde Andara Stephen Fry?)」
- ヒタ・リー(Rita Lee)
- エヂ・モッタ(Ed Motta)
- ポップ・ロック部門最優秀歌手賞(順に女性、男性)
- チン・マイア(Tim Maia)
- ポピュラー部門最優秀歌手賞(男性)
- 同 最優秀歌曲賞「ペンセ・エン・ミン(Pense em Mim)」
- 同 年間アルバム賞「アオ・ヴィーヴォーⅡ(Ao Vivo ll)」
- アンジェラ・マリア(Angela Maria)
- ポピュラー部門最優秀歌手賞(女性)
- レニーニ(Lenine)
- MPB部門新人賞
- 同 最優秀歌曲賞「ア・ポンチ(A Ponte)」
- ガル・コスタ(Gal Costa)
- ミルトン・ナシメント(Milton Nascimento)
- MPB部門最優秀歌手賞(順に女性、男性)
- パウロ・モウラ(Paulo Moura)
- インストゥルメンタル部門最優秀グループ賞(Paulo Moura & Os Batutas)
- 同 年間アルバム賞(Pixinguinha)
- イネジタ・バホーゾ(Inezita Barroso)
- アルセウ・ヴァレンサ(Alceu Valenca)
- 伝統音楽(ヘジオナル、REGIONAL、FOLK MUSIC)部門最優秀歌手賞(順に女性、男性)
- (Xangai)
- 最優秀編曲賞「(Joao Omar)」
- 最優秀歌曲賞「(Nois E Jeca Mais E Joia)」
- マンゲイラ(Mangueira)、(
- サンバ部門最優秀歌曲賞「シャオ・ヂ・イスメラルダス(Chao de Esmeraldas)」
- 同 年間アルバム賞「シコ・ブアルキ・ヂ・マンゲイラ(Chico Buarque de Mangueira)」
- エルザ・ソアレス(Elza Soares)
- パウリーニョ・ダ・ヴィオラ(Paulinho da Viola)
- サンバ部門最優秀歌手賞(順に女性、男性)
- ヴァグネル・チゾ(Wagner Tiso)
- 最優秀オリジナル・サウンドトラック賞(A Ostra e o Vento)
- カシア・エレール(Cassia Eller)
- 最優秀興行賞「ヴェニーノ・アンチモノトイア(Veneno Antimonotonia)」
- ヴィラ・ロボス室内楽団(Orquestra de Camara Villa-Lobos)
- 最優秀クラシックアルバム賞
- ジジ・ポッシ(Zizi Possi)
- 最優外国語アルバム賞「ペール・アモーレ(Per Amore)」
- (Ze Ramalho)
- 最優秀映像プロジェクト賞「(20 Anost - Antologia Acsutica)」
シコ・ブアルキ、ピアソラの未完成曲の権利得る
少し前の話ですが、アストル・ピアソラ未亡人が未完成曲をシコ・ブアルキ(Chico Buarque)に譲るというニュースと読みました(5月頃)。1992年から彼が希望していたそうで、既に曲を完成させたとの情報がアルゼンチンのClarin紙に載ったそうです。この曲はその後どうなったのでしょうか。( 1998,6 )
Praca do Brasil vol.12 (1998/4/27,プラッサ・オンゼ)レポート
ナヴィゲーター/中原仁氏(ARTENIA)、原田千佳氏(Latina)
特別レポーター/友田さとし氏 今回はビデオ「サザン・ウェーヴ vol.7,8,9」(フジテレビ映像企画部制作、発売中)を見ながら、それについての友田氏の話が中心でした。取材時の話などたくさんの解説がありました。
特別レポーター/友田さとし氏 今回はビデオ「サザン・ウェーヴ vol.7,8,9」(フジテレビ映像企画部制作、発売中)を見ながら、それについての友田氏の話が中心でした。取材時の話などたくさんの解説がありました。
- フェルナンダ・アブレウ、ライヴ・イン・サンパウロ
女性に人気があるとのことです。なるほど、歯切れよい感じで格好よいです。 - ヴィデオソフト「サザン・ウェーヴ VOL.7,8,9(リオ編2本、北東部編1本)」
ダイジェスト上映と友田氏による取材時のコメントがありました。以下当日プログラムを写します。
サンパウロ、リオ- 街角のバーで歌うぺペロンチスタ(吟遊詩人)
- アナ・カラン自宅ソロ~シコ・セーザル野外ライブ
- リオ実景~ジョイス自宅でのソロ~クアルテート・エン・シー&MPB4
- ストリート・サンバ・ファンク爆裂! ファンキン・ラタ
- これぞサンバ・カリオカ! ネルソン・サルジェント、モナルコ&クルスチーナ
- サンバの粋! エルトン・メデイロス、ゼー・ヘナート&マリアーナ・ヂ・モライス
北東部、リオ- 北東部の貴重な伝統芸(カヴァーロ・マリーニョ、マラカトゥ・フラル
~伝統の町、オリンダでの街頭フレヴォ - オリンダ広場~驚愕の老婆、セルマ・ド・ココ~衝撃! カブラ・アラーダ
- 北東部郊外~北東部の新世代続々登場!
(1)アントニオ・ノブレガ (2)ヴィルジニア・ホーザ (3)セガ・バレイロ (4)ヒタ・ヒベイロ (5)メストリ・アンブロージオ - リオ実景~ワンダ・サー&セリア・ヴァス自宅デュエット
~ドーラ&カルリーニョス・ヴェルゲイロ親子
~マルコス・ヴァーリ自宅ソロ
~ミウシャ&クリストヴァン・バストス、珠玉のデュオ - マルコス・スザーノ・ワークショップ~レニーニ自宅ソロ
友田氏が特に一押ししていたペペロンチスタは計り知れない実力を感じさせます。また、ミウシャ&クリストヴァン・バストスの演奏には目頭が熱くなるとコメントされました。マルコス・スザーノ・ワークショップの様子を私は初めて見たのですが、集まった人々の熱気とリズムに改めて驚きました。元気のよい地の底から来るような音楽はやっぱりブラジルだと感じます。
Praca do Brasil vol.11 (1998/3/30,プラッサ・オンゼ)レポート
ナヴィゲーター/中原仁氏(ARTENIA)、原田千佳氏(Latina) 毎月、青山のプラッサ・オンゼ(Praca 11)で行われるこのイベントに初めて行ったのですが、なんと感動的なことに、バーで「カイピリーニャってなんですか?」と聞いた時、隣で立ち話してらした方が気さくに教えてくれました。その方が中原仁さんだったのです。最初からなんと幸運なことでしょう。カイピリーニャもおいしいし、じわじわ感激しました。また、休憩時間に一人さみしく座っている時、声を掛けてくれた方がいらっしゃったのですが、その方もなんとラティーナ社長の本田健治さんでした。活力ある方という印象で、失礼にも今月の「ラティーナ」は「イタリア・ポップス特集なので買うのやめたんです」と言ったら、「ブラジル好きな人は何でも聴いてやるゾという気持ちがあるはずだから、聴かなきゃー」と教えられました。なるほど、ブラジル好きとはそういう気質かと思って早速買いました。
- 今月の最新情報 - ガル・コスタ来日
- コンサートの値段が(1万2千円と)高いのが困るなあ、という話でしたが、でもこれは価値があるそうですう。本田さんは、もうガル・コスタの人生だから絶対注目だ、というようなことを後で話してらっしゃいました。
- ブラジル直送最新ビデオ - ダウージ("para para")
- "para para"はズール語らしいです。ヘアスタイルが気になってしょうがないですが、なかなか濃い映像でした。
- ブラジル直送最新ビデオ - カエターノ・ヴェローゾ("Libro")
- 書物、書棚に囲まれたカエターノが古い西洋の図書館にいる知的な感じの映像でした。鋭敏な学者風です。「リーブロ」はこの映像とともに聴いた方がより堪能できると思います。中原さんは「このリーブロを聴いてない人は、近年、世界の音楽を全くを聴いていない人であると言い切ってよい!!」(台詞は筆者の記憶)とおっしゃってましたが、その通りでしょう。ただ、イベント終了後ヴァージン・レコードの中山さんに聞いたのですが、普通のブラジル人はあまりカエターノを聴かないそうで、聴く人は中流階級より上の人であるそうです。過去においてはMPBは前衛音楽っだったでしょうし、現在の「リーブロ」などはちょっと難しい感じのする仕上がりで、やや馴染み難い、ある意味では高度な素養を必要とする音楽になってますので、映像とともに楽しむのもよいと思います。何れにせよ、音楽の世界をより広げる映像に仕上がってますのでとてもよいです。
- 宮沢和史「AFROSICK」ブラジル・レコーディング名場面集
- マルコス・スザーノ、レニーニ、(特別出演:本田健治氏)らが登場する貴重なレコーディング風景の映像でした。現代的なブラジリアン・ポップスでした。宮沢和史はポルトガル語の歌詞をよく十分練習して歌ってましたが、中原さんの解説によれば、ポルトガル語には独特の語感があり外国人には難しいが、それが我々に深い感銘を与える、とのことでした。なるほど、宮沢和史のポルトガル語はネイティブではありませんが、ポルトガル語で歌う意味は十分あると思います。話はそれますが、宮沢和史さんの英語の発音は低くて流暢で、とてもかっこよかったです。羨ましい。
- 特集 / 本日発売!! マルコス・スザーノ必殺のレッスン・ヴィデオ
- パンデイロの教則ビデオに仕上がっている「パンデイロ・コンプリート・レッスン」の抜粋上映がありました。これは身のある内容で、基礎がわかりやすく、要領よく解説されており、また最後のアンサンブルの一人四役演奏(分身の術付き)はお茶目で、とても面白いビデオです。私も買ってしまいました(7000円)。サンバのリズムが最も難しいようです(中原さん解説)。
- パンデイロは非常に表現力の豊かな楽器ですが、その秘密がこのビデオで明かされたと言ってよいでしょう。これが出たからには、パーカッションをやる人が忠実に練習するのは必至で、今後いろいろなところでマルコス・スザーノ節が演じられることは間違いありません。しかし、「右手の爪の下にタコができますが、仕方ありませんね」とあっさりビデオで語ってましたが、かなり修練を積んだ上に、生来のリズム感が問われることになるでしょう。別のチラシによればパンデイロも販売されるそうで、スザーノ仕様でも19,000円と、楽器にしては安い値段でした。
( 1998,4 )
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ブラジル音楽草
山本直幸 (Naoyuki Yamamoto) / yamamot at m78 dot com since:1998,2,18(wed)
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